裁判の傍聴

先日、ある裁判の公判を傍聴してきました。

被告人を取材したことがあり、かねてより関心のあった事件でした。

大阪地方裁判所本館8階803号法廷。

公判は10:00に開廷しましたが、新聞記者のほかに傍聴希望者は思ったより少なく、傍聴席はいくつか空席がありました。逮捕当時はテレビにも取り上げられた事件でしたが、時間の経過とともに世の中の関心もしだいに薄れていくのでしょうか。

 

黒のスーツを着用し、ロングヘアをアップにした被告人は、一年以上の拘置所生活のせいかやややつれて見えました。ですが、もともと美貌の持ち主なので痩せた分、顔の輪郭がシャープになり、以前会った時よりも少し若返った印象でした。また時折、傍聴席に向ける表情はどこか挑戦的にも見え、眼光鋭く動じない態度は健在でした。

 

この日は数回の証人尋問を経て行われる論告弁論の日。まず検察官が事件に関する事実とそれに対する法律面の意見を述べ、続いて弁護人が検察側の起訴内容などに対して意見陳述をした後、最後に被告人が最終陳述をします。担当検察官は大阪地検特捜部のやり手検察官。複雑な事件の内容を一度も噛むことなく、立て板に水のごとくの弁論でした。そして最後に「巨額の被害額で犯罪内容が悪質である」「首謀者である」「完全に否認し、反省の態度が皆無である」「民事再生法の根幹を揺るがす犯罪である」「身勝手な犯行動機である」ことなどから、懲役13年を求刑しました。それが約1時間。

 

続いての弁護人弁論では、最初に、被告人が大勢の関係者に迷惑をかけたことに対して猛省していることを告げました。そして、検察側の陳述に対してひとつひとつ丁寧に矛盾点を突いていき、事件の全体像がいまだ解明されていないことを強調しました。ただ、唯一、民事再生法違反については争わないことを再度表明。したがって争点は、粉飾決算疑惑と輸出手続きをめぐる詐欺疑惑ということになります。弁護側は約1時間の陳述の後、「犯罪にはあたらない」と無罪を主張しました。被告人の最終陳述について詳細は割愛しますが、反省しつつも無罪であることを主張。これで裁判は結審し、5月の判決を待つこととなりました。

 

懲役13年の求刑に対して無罪の主張。

私は裁判に関して不案内なので、これが何を意味しているのかわかりません。しかし、実刑か無罪かの全面対決であり、どちらの判決が下されても控訴することになるのでしょう。

私は真実を知りたいだけですが、両者の陳述を聞いていても腑に落ちないことが多々ありました。検察の主張にも、「すべてはずさんな経営に端を発している」という弁護側の反論にも、核心部分が欠けていて説得力が弱かったように思います。

さて、裁判官はどちらの主張を支持するのでしょうか。

西天満の大阪地方裁判所
西天満の大阪地方裁判所